コラム
親がどこで亡くなったかが不動産売却に影響することも
- 2022.09.02
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不動産相続コラム
親から相続した自宅の売却の依頼を受けたときに私が必ず依頼者に聞く質問があります。それは「この家の中では誰も亡くなっていないですか?」という質問です。
なぜ私が必ずこの質問をするのかというと、不動産を売却する際に、このことが、とても大きく影響をすることがあるからです。では、一体どのように影響するのでしょうか?
この物件で過去に人が亡くなっていると聞いたらどう思うか?
例えば皆さんが家を買おうとした時に「実はこの物件の中では過去に人が亡くなっています」と聞いたらどのように思いますか?そんなことは全然気にもしないという人もいれば、それだったら購入は見合わせたいという人もいるでしょう。相場より安くなるなら前向きに検討していきたいという人もいるかもしれません。
またそれは亡くなった理由や状態にもよるでしょう。
例えば、首つりなどの自殺で亡くなったとなると、購入検討をしたくないという方はきっと多いと思います。この家の中で過去に殺人事件があったというのも同様だと思います。自殺や殺人事件となるといわゆる事故物件ということになってしまうので、相場よりも価格を下げざるを得なくなります。
では病死や老衰で、高齢者の方がたまたま家で亡くなったということであればどうでしょうか?もちろん気にされるお客様もいると思いますが、きっと自殺や殺人事件よりは、気にはならないお客様も多くなることでしょう。
ただ、病死や老衰による死亡だとしても、亡くなってから1カ月以上発見されていない(いわゆる孤独死)状態だったと聞くとどうでしょう。そうすると、また印象が全然変わってくると思います。
なぜ伝えなくてはならないのか?
不動産の販売を仲介する私たち宅建業者(不動産会社)、そして売主の立場であるあなたには、不動産の売買価格に影響を及ぼすような可能性のある事項は重要事項説明の中で、全て買主様に伝える義務があります。
そのうちの項目の一つが、まさに「この家の中で誰も亡くなっていないかどうか」ということなのです。
もしそのような事実があったにも関わらず、売買契約締結時に何もお伝えしないまま、何も知らない方が購入し、引っ越しをしてから、近所の人からそこで誰かが亡くなっていたと聞かされたらどう思うでしょうか。あなたがそのお客様の立場だったらどう思いますか?
そうなると「その事実を知っていたら購入はしなかった。なぜ伝えてくれなかったのか」とあなたや不動産会社に対して告知義務違反で損害賠償請求をしてくる可能性が大いにあり得ます。もしそんな事態に陥ってしまえば、この不動産売買に関わった人全員にとって最悪な状況になってしまうことは間違いないでしょう。
ですから、とても聞きにくいことではあるのですが、私は不動産の売却の依頼を受けるときには必ずこの質問をするのです。
増えている高齢者の孤独死
そして、最近は実際に高齢者の孤独死の案件が増えているのも事実です。
先日ご相談を受けたご自宅ではお風呂場の浴槽の中でお父様が亡くなっていたとのこと。亡くなって2日後に発見されたので、建物にはそれほど影響はありませんでした。建物自体はリフォームしたばかりで、とても綺麗だったので、お風呂だけ交換をして、そのまま中古住宅として販売活動を行うことにしましたが、このことは購入検討者にはお伝えをしています。
また亡くなってから1カ月以上も発見されなかったという案件もありました。現地確認に行ったところ、家の中は生前のままで、全く片付いておらず、いわゆるゴミ屋敷に近い状態でした。この状況ではとても中古住宅として販売するのは難しいので、建物は取り壊しをして、土地で販売をすることにしました。
ちなみに建物を取り壊したからと言って、告知事項がなくなるわけではありません。ただ現実的には建物がなくなってしまえば、告知事項をお伝えしても、気にする方が少なくなることは十分考えられます。
このように建物内で人が亡くなった事実があるかどうかは、販売活動や不動産の価格にも大きな影響を及ぼしますし、万一それをお伝えすることをせず売却してしまった後に発覚をすると、大変なことになってしまいます。
ですからもし建物の中で誰かが亡くなっているような事実があれば、それは必ず売却を依頼する不動産会社にお伝えするようにしてください。
ポイント
・相続した不動産の中で過去に誰かが亡くなっている場合は、仲介業者にその旨を伝える
・死因や状況によっては売買価格に影響することもある
・建物を取り壊したからといって、過去にあった告知事項を伝えなくていいということではない