コラム
土地の価格と不動産の遺産分割トラブル
- 2022.08.20
- カテゴリ:
不動産相続コラム
土地の価格は「一物四価」とも、「一物五価」とも言われます。不動産の難しいところは一般的な商品や製品と違って、価格が一律ではないところです。
そうしたことから不動産の遺産分割時には土地の価格を巡ってトラブルになることが多々あります。
5種類ある土地の価格
土地の価格は主に以下の5種類に分けることができます。
(1)実勢価格・・・いわゆる時価です。実際に取引されている価格です。
(2)公示価格・・・毎年3月に国土交通省が公表する更地としての価格です。(毎年1月1日時点の価格です)
(3)基準地価・・・各都道府県による7月1日時点の土地価格の調査です。9月下旬に公表されています。
(4)路線価額・・・相続税や贈与税の申告時に必要となる税額計算の評価に使われます。(公示価格の80%程度)
(5)固定資産税評価額・・・固定資産税や都市計画税、不動産取得税や登録免許税の算定基準となる価格です。3年毎に評価替えが行われます。(公示価格の70%程度)
実際に売れる土地の金額(時価)を調べたい場合は、実勢価格や公示価格を参考にします。実勢価格はインターネットの不動産ポータルサイトで実際に売りに出ている土地の相場を見てみたり、不動産会社に聞いたりすることで、誰でもある程度の調査をすることは可能です。
また公示価格は路線価を80%で割り戻すことから求めることができます。
路線価÷80%=公示価(≒時価)
ただし、路線価から割り戻して算出する公示価(時価)はあくまで参考価格です。不動産は土地の形状や周辺の環境、接道している道路の種類や間口などによっても大きく金額が変わるので、目安の計算はご自身でやってみてもいいと思いますが、ちゃんとした査定はやはり不動産のプロに依頼すべきでしょう。
ちなみに路線価は公示価の80%となっていることより、相続のときに申告する土地の評価は、時価よりも20%程度低いことになります。不動産を所有していることが相続税対策になるのは、こうしたことも一つの要因として挙げられます。
遺産分割の際はどの価格を基準にするか?
相続で土地の価格を巡ってトラブルになることがあります。遺産分割をする際に、どの価格を基準にして不動産の価格を決めるかによって、相続人が取得する財産額が大きく変わるからです。相続人間で合意をしていれば、時価よりも20%程度低い路線価を基準に計算をして、遺産分割を行っても問題はないのですが、万一、遺産分割で揉めてしまった場合には、不動産価格は「分割時の時価」で判断していくことになります。
では「分割時の時価」とは、どうやって判断するのでしょう。
例えば不動産会社が出してくれる査定書は一つの判断材料にはなり得ます。ただそれでは納得ができず、相続人間で本格的に揉めて調停や裁判になってしまった場合には、不動産鑑定士に鑑定評価を出してもらうことになるのです。
ですから遺産分割協議をするときには、相続人全員に対して、相続する不動産の価格についての共通認識を持ってもらうことが大切です。不動産は相続財産の中でも特に大きな財産であるため、一つボタンを掛け違えたところから遺産分割協議が始まると、あとで修復するのはとても難しいのです。こうしたことからも、スムーズな不動産の相続を実現するためには不動産・相続に詳しい専門家の存在が必要不可欠となるのです。
ポイント
・土地の価格は5種類あり、それぞれ使用用途が異なる
・遺産分割の際の価格はどれを使ってもいいが、揉めてしまった場合は時価で判断していくことになる
・遺産分割協議をするときには相続人全員に対して、相続する不動産の価格についての共通認識を持ってもらうことが重要