コラム
親から相続した賃貸併用住宅や入居者付きのアパート・ビルの売却
- 2022.07.20
- カテゴリ:
不動産相続コラム
世田谷区で親から相続した賃貸併用住宅や入居者付きのアパート・ビル(以下、「賃貸用不動産」といいます)を売却したい場合について、考えていきましょう。
相続した賃貸併用住宅や賃貸用不動産の査定方法
こうした賃貸用不動産の査定方法は、一般的には「収益価格」をベースにして算出することが多いです。「収益価格」とは、対象となる不動産が得られる家賃などの「収益面」に注目して出す価格のことです。1年間に入ってくる家賃の総額と、1年間に出ていく費用の総額がわかれば、「収益価格」を求めることは可能です。また賃貸用不動産の築年数や建物の構造などにもよって査定額は大きく異なります。
賃貸不動産の場合は、購入者が投資目的で購入検討することが多いため、銀行の融資付けが出来るかどうかで、購入価格目線が大きく変わってしまうからです。ですので、あとから増築をして、建築面積が本来の容積率をオーバーしている場合や、築年数が古く現行の建築基準法の基準を満たしていない建物の場合は、査定額は大きく下がります。
こうしたことから素人の方だと、簡単に査定をすることは難しいと思いますので、不動産会社に依頼をして査定をしてもらうことをお勧めします。
相続した賃貸併用住宅や賃貸用不動産の売却にかかる費用
世田谷区で相続した賃貸用不動産の売却にかかる主な費用としては以下のものが挙げられます。
【必ず発生するもの】
・仲介手数料
・契約書に貼付する印紙代
・相続登記費用(相続で取得した場合)
・抵当権抹消費用(負債がまだ残っている場合)
【契約条件によっては発生するもの】
・立退き費用
【その他】
・譲渡所得税
相続した賃貸併用住宅や賃貸用不動産の売却の方法
一般個人に向けての売却であれば、不動産会社と媒介契約を締結して、レインズに掲載してもらい、不動産情報を広く公開して買主を探したり、不動産のポータルサイトに掲載をしてもらい、直接、多くの購入希望者の目にあなたが売却したい賃貸不動産の情報が届くような売却方法をとることが有効となります。
また、相続税の納税や遺産分割などで売却したい期限が決まっている場合や、早めに換金をしたい場合は、買主を不動産会社に絞って、入札などの方法をとることが有効です。不動産会社が買主となる場合は、仕入れ値となるため、目安として、周辺相場の6~7割程度の価格になることが多いです。
こうした賃貸用不動産は、購入希望者が投資家や不動産の仕入れ業者など特殊なマーケットとなることや、一戸建てやマンションの1室と違って、不動産自体に色々な問題が潜んでいることが考えられるため、まずは不動産情報を一般公開せずに、入札を行うことをお勧めします。
入札を進めることによって、その不動産の特性や問題点、価格について現状把握をすることができます。入札による結果が、あまりにも自分たちの想定していたものとかけ離れていた場合は、一般公開をしていくといった流れがベターであると私は考えます。
またご自身で入居者やテナントを立退かせてから売却をするという方法もありますが、あまりお勧めはできません。というのも、立退きで入居者やテナントとトラブルになってしまうことが少なくないからです。一度トラブルになってしまうと、その後の売却活動や売却価格にも大きく影響します。入居者の数やテナントが少ない場合や、入居者との契約形態が定期建物賃貸借契約の場合では、立退いてもらい、売却をすることも考えられなくはありませんが、まずは立退きを始める前に、売却を依頼する不動産会社に相談されることを強くお勧めします。
相続した賃貸併用住宅や賃貸用不動産の売却の流れ
上記の流れで進めていく場合に、売主さんに登場していただくタイミングは、以下の4回です。
・不動産会社との媒介契約締結時
・入札結果の報告時
・買主との不動産売買契約締結時
・引渡し
不動産売買契約の締結は、売主側または買主側の仲介業者の事務所で行うことが一般的です。所要時間は1時間~2時間程度です。仲介業者が作成をした不動産売買契約書、重要事項説明書、その他必要書類等に署名捺印(捺印は認印でOK)をして、手付金を受領すれば売買契約は完了となります。手付金の金額は売買金額の5~10%程度が一般的です。
引渡しは買主が融資を受ける銀行で行うことが一般的です。司法書士同席のもと、売主・買主のそれぞれの本人確認を行い、売買残代金および精算金(固定資産税、管理費、修繕積立金など)が売主の指定した口座に振り込まれます。口座への着金が確認できたら、鍵や必要書類、領収書を買主に渡して、引渡しは完了となります。引渡しのことを「決済」とも呼びます。所要時間は1時間~2時間程度です。月末の場合や、利用する金融機関によっては着金の確認まで時間がかかることがあります。最近はネットバンキングを利用するケースも多いので、その場合は30分程度で完了することもあります。
上記の4回以外のタイミングで売主さんに登場いただく機会として考えられるのは、契約条件の中で、確定測量が必要な場合です。確定測量とは、隣地の人と立ち会って、境界を確認する作業です。契約条件に確定測量が入ってきた場合は、売主の費用負担で行うことが多いです。土地家屋調査士に依頼をするので、図面の作成や現地の測量等は全て土地家屋調査士が行ってくれますが、近隣の方との立会いは売主様が一緒に現地確認を行う必要があります。確定測量の作業に入る前に、近隣の方へご挨拶を一緒にされたほうが、その後の境界確認作業がスムーズにいくことが多いので、ご挨拶と境界確認の立会い時の2回ほど、現地に足を運んでいただくことになります。
相続した賃貸併用住宅や賃貸用不動産の売却にあたって用意しておきたい資料、書類
・査定を依頼するにあたってご用意いただきたいもの
□ 最新年度の固定資産税の課税明細書
□ 建物の図面(あれば)
□ 管理会社との管理契約書
□ 入居者やテナントとの賃貸借契約書
□ 管理会社からの毎月の収支報告書(毎月かかる費用がわかるもの)
・媒介契約締結時にご用意いただきたいもの
□ 認印
□ 購入時の売買契約書や重要事項説明書(あれば)
・不動産売買契約締結時にご用意いただきたいもの
□ 認印
□ 顔写真付き身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
□ 印紙または印紙代
・引渡し時にご用意いただきたいもの
□ 認印、実印
□ 印鑑証明書
□ 顔写真付き身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
□ 権利証または登記識別情報通知書
□ 建物の図面(あれば)
□ 管理会社との管理契約書
□ 入居者やテナントとの賃貸借契約書
□ 共用部の鍵
※購入時の売買契約書があると、譲渡所得税の申告の際に有利になる可能性があるため、探しておくことをお勧めします。
※権利証や登記識別情報通知が万一、手元に見当たらない場合は、再発行ができないため、司法書士に依頼しなくてはならない手続きが出てきますので、早めに確認をされることをお勧めします。
※登記簿謄本や公図は一般的には不動産会社で取得することが多いので、ご用意していただかなくても大丈夫です。
ポイント
・賃貸併用住宅や入居者付きのアパート・ビルなどの賃貸用不動産は「収益価格」をベースにして査定する。
・賃貸用不動産の査定には賃貸借契約書(毎月の賃料収入がわかるもの)や管理契約書等(毎月の支出額がわかるもの)の資料が必要となる。
・賃貸用不動産は、購入希望者が特殊なマーケットとなることや、不動産自体に色々な問題が潜んでいることが考えられるため、まずは不動産情報を一般公開せずに、入札を行うことを勧める。