コラム
住んでいない不動産をどう相続するか 〜世田谷区の空き家・空地をめぐる相続の実務〜
- 2025.07.03
- カテゴリ:
不動産相続コラム
世田谷区内で、「住んでいない実家」や「使っていない土地」が相続の対象になるケースが増えています。
高齢化の進行とともに、親が施設に入った後や他界したあと、実家が空き家になるという事例が急増。
しかし「今は誰も住んでいないから急がなくていい」と思って放置していると、税金や管理責任、近隣トラブル、売却・活用の遅れなど多くの問題を引き起こす可能性があります。
本記事では、世田谷区における「住んでいない不動産」の相続について、実務上の注意点・対処法・地域特性を踏まえた対策を5部構成で解説します。
【第1部】世田谷区に多い「空き家相続」の実情
世田谷区では、高齢世帯の増加とともに、相続された不動産が誰にも使われず空き家化するケースが顕著になっています。
■ よくある背景
・親が施設に入ったあと、実家がそのまま空き家に
・遺族はすでに持ち家があり、戻る予定がない
・売却や貸し出しを検討していないまま放置
■ 問題点
・固定資産税は発生し続ける(住宅用地特例も将来解除の恐れ)
・「特定空家」に指定されると税負担が6倍に
・放火や不法投棄、近隣からのクレームリスク
世田谷区の住宅密集地では、空き家放置によるトラブルが目立ってきています。
【第2部】名義変更・登記の義務と影響
「住んでいない=相続しない」ではありません。たとえ空き家や使っていない土地でも、登記簿上の名義が故人のままならば、相続登記は義務になります。
■ 義務化ポイント
・2024年4月より、相続開始から3年以内の登記が義務化
・期限を過ぎると10万円以下の過料(罰金)対象に
・空き家でも相続人間の協議がまとまらないと登記できない
■ 実務的影響
・売却や活用をするにも登記が前提
・登記を怠ると、固定資産税の納税通知が届かない/共有問題の固定化
・空き家の所有者不明状態は、行政指導や競売対象になる場合も
世田谷区のような不動産価値の高い地域では、「名義放置」は致命的な損失につながります。
【第3部】空き家相続後の選択肢を整理しよう(世田谷区の傾向)
不動産を相続したあと、何を選ぶかによって負担や効果が大きく変わります。
■ 主な選択肢
・売却する
・現在の実勢価格を調査(路線価・公示価格を参考に)
・リフォームや更地化が必要な場合も
・貸し出す(賃貸・民泊)
・リノベーションして資産活用する人も増加中
・管理会社を活用する方法あり
・活用する(親族が使う/自宅建替など)
・家族で利用方針を話し合っておく
■ 世田谷区ならではの注意点
・「再建築不可」の土地もある(接道義務注意)
・防火地域/準防火地域など建築規制が厳しい
・路地状敷地(旗竿地)の評価・売却難易度が高い
【第4部】トラブル回避のための事前準備
空き家を相続したあとに後悔しないためには、「相続前」からの準備が重要です。
■ 家族で話し合うべきこと
・誰が相続するのか/誰が管理・納税するのか
・将来的に誰が使うか/売るか/貸すか
■ 準備しておくべき資料
・登記簿謄本(名義と共有者確認)
・固定資産税納税通知書・評価証明書
・建物図面、境界確認書、現地写真
■ 専門家との連携
・不動産会社:売却・活用の提案
・司法書士:名義変更・登記相談
・税理士:相続税・譲渡所得税の相談
世田谷区では、地元の事情に詳しい専門家の力を借りるのが安心です。
【第5部】チェックリスト:住んでいない不動産の相続対策10項目
相続登記の義務と期限(3年以内)を把握している
→ 義務化により放置不可/2024年4月以降の相続開始分から適用
不動産の登記簿・固定資産税評価額を確認した
→ 名義人と評価額を把握しておく
相続人全員で不動産の活用方針を共有している
→ 売却/活用/放置などの方向性を事前に確認
家族内で「誰が管理・納税をするか」を決めた
→ 空き家でも税金・責任は発生します
現地に赴き、老朽化・安全性などを調査した
→ 倒壊・腐食・ごみ問題などのリスク確認
「空き家特例(3,000万円控除)」の適用可能性を調べた
→ 売却予定がある場合、譲渡所得税対策になる
再建築不可や借地権などの制限がないか確認した
→ 世田谷区では旗竿地や接道なし土地に注意
地元の不動産会社に相場や需要を相談した
→ 売却/賃貸いずれにしても情報収集が必要
活用・売却・管理の選択肢を比較検討した
→ 相続人の意向や収益性、労力を比較
信頼できる司法書士・税理士に相談できる体制を整えた
→ 名義変更、節税、登記の専門家支援が不可欠
空き家でも“責任”は重い、だから早めの行動を
世田谷区で住んでいない不動産を相続した場合、それは「放置していていい資産」ではありません。
固定資産税や管理責任、登記義務、空き家特例、譲渡所得…どれをとっても実務的な対応が必要です。
放っておくことで「負動産」となり、兄弟間の対立や行政からの指導を受ける前に、
できることから1つずつ始めましょう。この記事のチェックリストをもとに、ご家族としっかり話し合い、
必要に応じて、世田谷区内の専門家に早めにご相談ください。