コラム
世田谷区の地価上昇が相続に与える影響 〜「値上がり=安心」ではない、相続の落とし穴とは?〜
- 2025.06.18
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不動産相続コラム
世田谷区は、東京23区の中でも特に地価が高く、住宅地としての人気も根強い地域です。
特に2020年代以降、インバウンド需要や都心回帰傾向なども相まって、成城・用賀・深沢といった高級住宅街を中心に、地価が着実に上昇しています。
「地価が上がれば、資産が増えてラッキー」と思われがちですが、実はその裏で相続税の負担が急激に増えるという落とし穴が潜んでいます。
この記事では、地価上昇が世田谷区の不動産相続に与えるリアルな影響を5つの視点から解説します。
【第1部】地価上昇と相続税評価額の関係
■ 地価が上がれば、相続税評価額も上がる
相続税の計算は「評価額」に基づいて行われます。
土地の評価額には主に以下の2つがあります。
・路線価(国税庁が発表):相続税の算出に使用される
・固定資産税評価額:固定資産税の計算に使用される
世田谷区の場合、路線価は実勢価格の80%程度とされますが、年々上昇傾向にあります。
たとえば、2020年に坪単価200万円だったエリアが、2025年には坪230万円になっているということも珍しくありません。
この差は、数百万円単位の相続税の増額につながる可能性があります。
■ 評価額は上がっても現金収入があるとは限らない
地価が上がっても、売却や賃貸に出していない限り、相続人にとっては実際のお金が増えたわけではありません。
結果、「税金だけが上がって、払う手段がない」という事態に陥る可能性があるのです。
【第2部】世田谷区のエリア別・地価上昇の傾向
■ 人気エリアの高騰が著しい
以下は、実際に地価が顕著に上昇しているエリアの一例です。
・成城:交通の便がよく、閑静な住宅街。大型敷地が多く評価額も高騰傾向
・下北沢:再開発が進み、若年層の居住人気が急増
・用賀・桜新町:駅近エリアの整備で実勢価格が右肩上がり
・奥沢・深沢:住宅地としてのブランド力が強く、相続評価も高め
これらの地域では、10年前の評価額の1.3倍〜1.5倍程度になっているケースもあり、相続税の負担もそれに比例して大きくなっています。
■ 路線価の変動は年1回なので注意
地価の上昇が反映されるのは「翌年以降の路線価」。
たとえば、2025年に地価が高騰した場合、2026年の路線価に反映され、2026年以降の相続に大きな影響を与えることになります。
【第3部】地価上昇で「相続しづらくなる」ケース
■ 相続税が払えないから「売るしかない」
世田谷区でよくあるケース
・親の自宅を相続(敷地60坪・路線価300万円)→評価額1億8000万円
・小規模宅地等の特例を使っても、課税対象が7000万円超
・相続人が2人の場合、1人あたり1000万円超の相続税負担も
この場合、土地を分筆・一部売却して納税するという判断に迫られることもあります。
■ 相続人同士で「分けにくい」問題も
地価が高くなると、土地が「お金以上の価値」を持ちます。
誰がどこを受け取るかで揉めやすくなり、感情的な対立や遺産分割協議の長期化に繋がります。
【第4部】地価上昇に備えた相続対策とは
■ 早めの不動産評価と納税シミュレーション
まず行うべきは、世田谷区内の保有不動産の現状把握です。
評価額・実勢価格・路線価を不動産会社や税理士に依頼して確認しておきましょう。
そのうえで、将来発生し得る相続税を事前にシミュレーションすることで、具体的な対策を講じやすくなります。
■ 生前贈与や家族信託の検討
地価が高い不動産は、生前に一部を贈与することで将来の負担を軽減できる可能性があります。
また、家族信託を活用すれば、判断能力の低下に備えつつ、資産の管理や処分方針をあらかじめ決めておけます。
■ 土地の有効活用でキャッシュを確保
貸駐車場、賃貸住宅、コインパーキングなど、不動産を収益化することで納税資金を確保できるケースもあります。
世田谷区では、古家付き土地のリノベ賃貸ニーズも高く、有効な選択肢となります。
【第5部】地価上昇に備えるための相続準備チェックリスト
・ 世田谷区内の不動産ごとの路線価を把握しているか?
・相続税評価額のシミュレーションを行っているか?
・小規模宅地等の特例など、節税制度の適用可能性を確認しているか?
・生前贈与・家族信託などの仕組みを検討したことがあるか?
・納税資金の確保手段(貯蓄・保険・土地活用など)を考えているか?
・専門家(税理士・不動産鑑定士など)に定期的に相談しているか?
・世田谷区の地価動向を年単位で追っているか?
地価上昇の恩恵とリスク、両方を理解して備える
「資産が増えた」と見える地価の上昇ですが、世田谷区のような地域では、それがそのまま相続税の増加リスクに直結します。
土地を守るには、“受け継ぐ人の現実”に即した準備が必要です。
最も大切なのは、「まだ元気なうちに」話し合いと情報整理をしておくこと。
納税に備える方法も、感情の整理も、準備しておけば必ず負担を軽減できます。
世田谷区で不動産を相続するご家族は、**「地価が上がったからこそ早めの対策」**を心がけてください。