コラム
世田谷区の路線価と相続税の関係とは? ~知らないと損する相続の仕組み~
「うちは現金より不動産が多いから、相続税は関係ないと思っていました」
これは、世田谷区で相続相談を受けた60代の男性の言葉です。
都内でも屈指の住宅地である世田谷区では、資産の多くが不動産(とくに自宅)に偏っているケースが非常に多くあります。
一見、普通の一戸建てのように見えても、その土地の「評価額」が非常に高く、想定以上の相続税が発生するケースが少なくありません。
では、相続税を左右する「評価額」は、どうやって決まるのでしょうか?
その鍵を握るのが「路線価(ろせんか)」です。
この記事では、世田谷区における路線価とは何か、相続税とどう関係しているのか、そして対策のヒントまで、具体例を交えながら詳しく解説していきます。
【第1部】そもそも「路線価」とは?世田谷区ではどのくらい?
路線価(ろせんか)とは、国税庁が毎年7月に公表する、「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことです。
相続税や贈与税を計算する際に使用される、いわば相続税評価の基準です。
世田谷区では、主要な道路沿いや人気エリアほど路線価が高く、
例えば以下のような違いがあります(※2023年時点の例)
◆世田谷区・成城6丁目:1㎡あたり約65万円
◆世田谷区・三軒茶屋1丁目:1㎡あたり約80万円
◆世田谷区・奥沢7丁目:1㎡あたり約85万円
仮に、100㎡の土地を持っていた場合、
評価額は
85万円 × 100㎡ = 8,500万円
この金額をもとに、相続税が計算されるわけです。
つまり、現金を持っていなくても、不動産の評価額が高いだけで相続税が課税される可能性が高くなるのが、世田谷区の特徴です。
【第2部】「路線価評価」で損しないために知っておくべきこと
世田谷区の不動産を相続する際、路線価が高ければ高いほど、相続税の対象となる財産の評価額も上がります。
ただし、実際の相続税額は、単純に「路線価 × 面積」ではありません。
ポイントは以下の通り:
・道路の形状や間口によって評価が下がることがある(奥行価格補正、がけ地補正など)
・「角地」「二方道路」などは逆に評価が上がることもある
・「小規模宅地の特例(330㎡まで80%減額)」を使えるかどうかで税額が大きく変わる
例えば、世田谷区用賀の住宅地で、評価額が7,000万円の土地を相続する場合、
小規模宅地等の特例が適用されると
7,000万円 ×(1 - 0.8)= 1,400万円(相続税対象の評価額)
このように、特例を使えるかどうかで、相続税の額は数百万円単位で変わる可能性があるのです。
【第3部】世田谷区の「高評価地」に注意!人気エリアの落とし穴
世田谷区は、渋谷・新宿・品川などへのアクセスの良さから、「実家を残しておきたい」「土地を守りたい」というご家庭が多く存在します。
ところがその反面、以下のようなエリアでは評価額が想定以上に高くなり、相続税が重くのしかかるケースが増えています。
【高評価地の一例(2023年時点)】
◆三軒茶屋駅周辺(太子堂・三宿):利便性抜群で評価上昇傾向
◆下北沢・代田エリア:再開発により人気上昇中
◆奥沢・自由が丘寄り:東急線沿線で根強い人気
◆成城学園前エリア:高級住宅街として安定した評価
これらのエリアで親から土地を相続すると、数千万円の評価になることも珍しくありません。
現金が手元になく、不動産だけが相続財産という場合、「納税資金に困る」ことにもなりかねません。
【第4部】路線価を活用した節税対策の具体例
世田谷区における相続では、「評価を下げる方法」と「特例の活用」の2つがポイントになります。
対策①:土地の形状を見直して評価を下げる
道が狭い、奥まっている、間口が狭いなどの土地は評価が下がる可能性があります。
現地調査を通じて、「がけ地補正」「不整形地補正」などの適用を検討する。
→ 世田谷区梅ヶ丘の実例では、私道接道で間口が狭かったことで評価が15%減額になりました。
対策②:小規模宅地の特例を確実に使う
居住用として使用していた土地(自宅)を相続する場合、330㎡までは80%評価減できる。
ただし、相続人がそこに住み続ける、または同居していたなどの要件あり。
→ 世田谷区砧で実家を相続した方は、80%の評価減で相続税を1,000万円以上削減できた事例があります。
対策③:早めに資産の分割方法を決めておく
相続人の数が多く、不動産が分けられないと、共有問題・売却トラブルに発展しやすい。
路線価の高い土地は、売却や生前贈与なども含めた「資産の再編」が必要。
→ 世田谷区深沢の例では、親が元気なうちに土地の一部を生前贈与し、納税資金の目処も立てていたため、スムーズに相続できました。
【第5部】世田谷区で路線価・相続税対策をするためのステップ
最後に、世田谷区で相続税対策を始めるためのステップを紹介します。
ステップ1:自宅・土地の路線価を調べる
国税庁のホームページで、地図から調べられます。
「世田谷区 ○丁目 路線価」と検索すると見つかります。
ステップ2:不動産の評価額をシミュレーションする
不動産会社や税理士に依頼して、より正確な評価を出してもらいましょう。
ステップ3:小規模宅地の特例の適用可否を確認する
要件を満たせるかどうかは、相続人の状況によって異なります。
ステップ4:相続税の試算を行う
現金・預金なども含めて、トータルで相続税がいくらかかるかを確認。
ステップ5:生前から専門家に相談する
世田谷区には、相続専門の税理士・司法書士・不動産会社が多数あります。無料相談を活用して、早めに備えておくことが重要です。
まとめ
世田谷区の不動産を相続する際、「うちは普通の家だから大丈夫」と思っていたら、路線価の高さによって思わぬ相続税が発生する。これは決して珍しい話ではありません。
ポイントは以下の通りです。
・路線価は相続税計算の基準になる重要な数字
・世田谷区では特に高額評価の土地が多い
・補正・特例を活用すれば税負担は大きく減らせる
・「知らなかった」では済まされないのが相続税
世田谷区に不動産をお持ちの方は、今のうちに評価額を確認し、信頼できる専門家と一緒に対策を立てることが、家族を守る第一歩です。