コラム
世田谷区で借地権付き建物を相続した場合のケーススタディ3選 〜実例から学ぶ、相続対応の成功と失敗〜
- 2025.09.08
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不動産相続コラム
世田谷区は古くから地主と借地人の関係が根付いている地域です。戦前からの住宅地開発で「借地権付き建物」が数多く存在し、現在でも相続の相談で非常に多く扱われるテーマとなっています。
借地権は「土地を所有する権利」ではなく「土地を借りて建物を所有する権利」であるため、相続時に複雑な判断が求められます。地主との契約関係、承諾料や更新料、相続税評価、納税資金の確保など、検討すべき課題は山積みです。
今回は、世田谷区で実際に起きたケースをもとに、借地権付き建物の相続に直面した3つの事例を紹介し、それぞれから学べる教訓と対応策を整理します。
第1部:ケーススタディ① 地主との関係悪化で建替えができなかった事例
◆事例の概要
世田谷区奥沢の一角で借地権付き住宅を相続したAさん。建物は築50年以上で老朽化していたため、相続後に建替えを検討しました。しかし、地主が建替え承諾料として1,000万円を要求。Aさんは高額だと感じ、交渉がこじれてしまいました。
◆問題点
・借地契約の内容を十分に把握していなかった
・地主との関係を日頃から築いていなかった
・専門家に相談せずに感情的に対応した
◆教訓
世田谷区では地主と借地人の関係が長く続くため、「関係性の維持」が最も重要です。相続したらまず契約内容を確認し、地主への対応を丁寧に行うべきです。司法書士や不動産コンサルタントを介して交渉すれば、承諾料も妥当な水準に落ち着く可能性があります。
第2部:ケーススタディ② 納税資金が不足して借地権を手放した事例
◆事例の概要
世田谷区成城で借地権付き二世帯住宅を相続したBさん。建物と借地権の相続税評価額は高額で、課税対象となりました。しかし、借地権付き不動産は売却しにくく、手元に現金がなかったため、納税資金を確保できませんでした。最終的に借地権を地主に安く買い取ってもらうことになり、大きな資産を失う結果となりました。
◆問題点
・納税資金の準備をしていなかった
・借地権付き建物は市場性が低いことを理解していなかった
・生前に資産整理や保険活用をしていなかった
◆教訓
世田谷区の借地権は相続税評価が高額になりやすい一方、換金性が低いのが特徴です。相続税の納税資金は事前に生命保険や他の資産売却で準備しておく必要があります。地主との交渉で「底地を買い取る」選択肢を検討することも重要です。
第3部:ケーススタディ③ 底地を買い取って完全所有権化した成功事例
◆事例の概要
世田谷区下北沢で借地権付きアパートを相続したCさん。建物は築古で、将来の修繕や建替えに不安がありました。Cさんは地主と交渉し、底地を買い取ることを決断。資金はアパート収益と金融機関からの融資で賄いました。その結果、土地と建物の両方を所有する「完全所有権」となり、将来的な売却や資産活用の自由度が大幅に広がりました。
◆成功の要因
・地主との関係を良好に維持していた
・借地権割合や底地評価を正しく把握していた
・不動産コンサルタントを介して交渉し、適正価格で底地を取得できた
◆教訓
世田谷区では地主と借地人双方にとって「底地・借地権の一体化」はメリットがあります。地主は安定した資金を得られ、借地人は完全所有権を獲得できます。資金繰りの見通しが立つなら積極的に検討すべき解決策です。
第4部:世田谷区で借地権を相続した場合の共通課題
上記のケースから見える共通課題を整理すると以下の通りです。
・地主との関係性
相続開始後に関係を悪化させると、建替えや売却で不利になる。
・相続税対策
借地権は評価額が高いため、納税資金の準備が欠かせない。
・市場流通性の低さ
借地権付き建物は流通市場で買い手が限られ、売却困難になりやすい。
・専門家の活用不足
税理士・司法書士・不動産会社を交えて対策を講じる必要がある。
第5部:借地権相続対応の実務チェックリスト
・借地契約書を確認し、契約期間・更新料・承諾料を把握したか
・地主への承諾を得て相続登記を済ませたか
・借地権割合を確認し、相続税評価額を把握したか
・納税資金を確保するプランを立てたか
・底地の買取・借地権の売却など出口戦略を検討したか
・相続人全員で利用方針を共有したか
・世田谷区に詳しい専門家に相談したか
ケーススタディから学ぶ借地権相続の実務
世田谷区で借地権付き建物を相続した場合、対応を誤ると大きな損失につながります。しかし、適切に対処すれば資産を守り、むしろ価値を高めることも可能です。
・地主との関係を良好に維持する
・納税資金を事前に準備する
・底地の買取や資産活用を視野に入れる
・専門家とともに戦略を立てる
世田谷区の借地権相続は難易度が高い分、正しい知識と対応が求められます。今回の3つのケーススタディを参考に、ご自身やご家族の相続に備えてください。