コラム
借地権付き建物を相続した場合の対応策 〜世田谷区の不動産相続で失敗しないために〜
- 2025.09.07
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不動産相続コラム
世田谷区は都内でも借地権の割合が高い地域です。戦前から続く地主と借地人の関係が今も残っており、成城や奥沢、下北沢といった住宅地では「借地権付き建物」が数多く存在します。
しかし、借地権付き建物を相続した場合、相続人にとっては単純な「家の相続」では済まない問題が出てきます。地主との関係、地代の支払い、更新料、建替え制限、譲渡制限など、借地ならではの課題が山積みだからです。
この記事では、世田谷区で借地権付き建物を相続した場合にどのような対応策を取るべきか、5つの観点から詳しく解説します。
第1部:借地権の基本を理解する
◆借地権とは?
借地権とは「他人の土地を借りて建物を所有する権利」です。相続の対象となるのは「建物+借地権」であり、土地そのものではありません。
◆世田谷区における借地権の特徴
・借地権割合が高い
世田谷区の路線価図を見ると、借地権割合は60〜70%の地域が多い。これは不動産評価に直結します。
・地主との関係が続く
相続後も地代の支払いが必要。地主の承諾を得ないと建替えや売却ができないケースが多い。
・相続税評価への影響
借地権は財産として評価される一方、底地の評価も必要となり、複雑な計算が求められます。
第2部:相続時に起こりやすいトラブル
借地権付き建物を相続すると、以下のようなトラブルが発生しやすいです。
・地主の承諾問題
相続人が複数いる場合、誰が借地権者になるかを地主に承諾してもらう必要がある。
・相続税の納税資金不足
建物+借地権の評価が高額になり、相続税が発生するのに、土地は自分のものではないため売却できず納税資金が足りない。
・建替え制限
老朽化した建物を建替える際に地主の承諾料が必要。世田谷区では承諾料が数百万円〜数千万円になる例も多い。
・遺産分割の困難さ
借地権付き建物は分割が難しいため「兄弟で共有」になりがちだが、管理や売却時にトラブルになる。
第3部:対応策① 地主との関係を整理する
相続後まず行うべきは、地主との関係整理です。
・承諾書を取得
相続登記を行い、借地権の承継について地主の承諾を得る。
・契約内容の確認
契約書を見直し、更新料・承諾料・地代の取り決めを把握。
・地代の支払いを滞らせない
地代未払いは信頼を損ね、最悪の場合契約解除のリスクも。
世田谷区の地主は大規模に土地を保有している場合が多く、弁護士や不動産会社を代理に立てて交渉するケースも増えています。
第4部:対応策② 相続税・資産活用の視点から考える
借地権付き建物は相続税の評価と資産活用が課題です。
・相続税評価の確認
借地権割合を適用して評価額を算出。世田谷区は地価が高いため、評価額が相続税額に直結する。
・納税資金の確保
生命保険や他の不動産売却で資金を用意する。
・等価交換・底地の買取
地主と交渉して底地を買い取り、完全所有権化する方法。逆に借地権を地主に売却する選択肢もある。
・賃貸活用
借地権付き建物を賃貸物件にすることで収益化し、相続税や地代の支払い原資に充てる。
第5部:対応策③ 実務で役立つチェックリスト
・ 借地契約書を確認し、契約期間・更新料・承諾料を把握したか
・ 地主への承諾を得て、相続登記を済ませたか
・ 世田谷区の路線価を確認し、借地権割合を把握したか
・ 相続税の試算を行い、納税資金を準備したか
・ 借地権の売却・底地の買取など将来の選択肢を検討したか
・ 相続人全員で利用・売却方針を共有したか
・ 世田谷区に詳しい税理士・司法書士・不動産会社に相談したか
世田谷区で借地権付き建物を相続したら「放置しない」ことが重要
世田谷区で借地権付き建物を相続した場合、地主との関係整理、契約内容の確認、相続税対策を同時に進める必要があります。
・地主の承諾を得て契約関係を明確にする
・相続税の試算を行い、納税資金を準備する
・借地権・底地の将来活用を考える
・専門家の力を借りてスムーズに進める
借地権相続は、不動産相続の中でも特にトラブルが多い分野です。しかし、正しい対応策をとれば資産を守り、安心して次世代につなげることが可能です。