コラム
相続と贈与、どちらを選ぶべき? 〜世田谷区で迷ったら知っておきたい判断基準〜
- 2025.06.22
- カテゴリ:
不動産相続コラム
世田谷区で不動産を所有する高齢者やそのご家族から、よく寄せられるのが「生前贈与と相続、どちらを選ぶべきか?」というご相談です。
地価が高く、相続税の負担も大きくなりがちな世田谷区では、「節税」や「相続トラブルの予防」の観点から、どちらを選ぶかが将来の家族の安心に直結します。
この記事では、相続と贈与それぞれの特徴、税務上の違い、そして世田谷区ならではの注意点を交えながら、5つの視点で徹底解説します。
【第1部】相続と贈与の基本的な違いを押さえよう
■ 相続とは?
・被相続人の死亡によって、自動的に財産を受け継ぐこと
・相続税が発生(基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人)
■ 贈与とは?
・生きている間に無償で財産を譲ること
・年間110万円までは非課税、それを超えると贈与税が発生
■ 世田谷区の事例
・高額不動産(1億円超)を相続する場合、相続税のインパクトが非常に大きくなる
・贈与を組み合わせて段階的に財産移転する家族が増えている
【第2部】贈与を選ぶメリットと注意点
■ メリット
・財産を生前に渡すことで、相続時のトラブルを未然に防げる
・贈与税の非課税枠(毎年110万円)を活用できる
・相続税の課税財産を減らせる
■ 注意点
・贈与税の税率は相続税よりも高い(最大55%)
・名義変更や不動産登記の際に登録免許税・不動産取得税が発生
・相続開始前7年以内の贈与は相続税に加算される
■ 世田谷区の不動産を贈与する場合
・固定資産評価額が高いと贈与税・不動産取得税も高額に
・節税になるかどうか、税理士によるシミュレーションが必須
【第3部】相続で得られる安心とその課題
■ メリット
・相続税の方が贈与税より低い場合が多い
・小規模宅地等の特例(最大80%評価減)が使える
・配偶者の税額軽減(1億6,000万円 or 法定相続分まで非課税)が適用可能
■ 課題
・遺産分割で揉めるケースがある
・相続放棄や共有名義の問題が発生しやすい
■ 世田谷区の不動産相続でよくある課題
・都市計画道路予定地や接道義務に絡んで使いにくい土地も多い
・土地の分筆が難しいため、現物分割しにくい
【第4部】判断の決め手は“財産の種類”と“家族構成”
■ 財産の種類
・預金:分けやすく、生前贈与に向く
・不動産:評価額が高く、贈与よりも相続の方が得になることが多い
■ 家族構成・関係性
・兄弟間で仲が良いかどうか
・親が認知症になる前に判断を済ませる必要がある
■ 世田谷区の不動産オーナーに多いパターン
・「自宅+収益アパート」の組み合わせ→収益不動産だけを贈与、住居は相続
・分筆できない土地→家族信託や法人化も選択肢に
【第5部】相続・贈与判断のためのチェックリスト(世田谷区対応)
□ 相続人の数と関係性を把握している
・配偶者・子・兄弟など、法定相続人を正確に把握
・揉めやすい関係性かどうかも意識
□ 所有する不動産の評価額を税理士と確認している
・固定資産評価額・路線価・時価の違いを理解
・世田谷区は路線価が高く税額に大きく影響
□ 小規模宅地等の特例の対象になるかを確認している
・居住用宅地・事業用宅地などの判定
・最大80%の評価減が使えるかの確認
□ 毎年の贈与非課税枠(110万円)を活用している
・暦年贈与として長期間に分けて渡す設計
・家族全員への分散贈与も有効
□ 贈与税・登録免許税・不動産取得税の負担を試算している
・贈与時にはこれらのコストが発生
・贈与は「もらう側」に課税されることに注意
□ 3年以内の贈与が相続税に加算されることを理解している
・相続直前の贈与は課税対象になる
・節税目的の駆け込み贈与は要注意
□ 世田谷区の不動産特性を把握している
・接道状況・都市計画・再建築可否など
・地価が高いが使いにくい土地も多い
□ 将来的な賃貸・売却も含めた活用方針がある
・相続後の維持管理まで考えておく
・家族信託・法人化・リースバック等も選択肢
どちらにも“正解”はない。ただし、判断の遅れは損に直結
相続と贈与、どちらが正解かは家族によって異なります。
大切なのは、税制や制度の表面だけで判断するのではなく、
「家族の将来像」と「不動産の特性」に合わせた戦略を立てることです。
特に世田谷区のように地価の高いエリアでは、安易な贈与はかえって税負担を増やすことも。
専門家と相談しながら、目的・時期・税負担を整理し、「うちの場合はどちらが良いのか?」を納得いくまで検討することが、将来の安心につながります。
贈与も相続も、正しく使えば強力な“家族の資産防衛手段”になります。
判断を後回しにせず、今こそ準備を始めましょう。