コラム
不動産に借地権がある場合の相続対応 〜世田谷区でトラブルを避けるための実践ポイント〜
- 2025.06.23
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不動産相続コラム
世田谷区のように土地の評価が高いエリアでは、「借地権付き建物」を所有するケースも少なくありません。
借地権とは、簡単に言えば「他人の土地を借りて建物を建てる権利」のこと。
これを相続する際、土地を所有していない分、手続きや評価、権利関係が非常に複雑になります。
この記事では、世田谷区で実際に起こりやすいケースを踏まえて、借地権付き不動産の相続対応について5つの視点から整理し、トラブルを未然に防ぐための知識を解説します。
【第1部】借地権とは?相続の前に知っておくべき基本
■ 借地権の種類
・普通借地権:更新を前提とする借地権(契約期間30年〜)
・定期借地権:期間満了で必ず返還する借地権(更新不可)
■ 相続時に引き継がれるもの
・建物(被相続人名義)と借地権(使用権)が一体となって相続
・地代支払い義務も引き継がれる
■ 世田谷区に多い借地物件の傾向
・昭和期から続く古い借地契約(未登記や契約書紛失も多い)
・地主との関係性によって、相続時の交渉難易度が変わる
【第2部】借地権相続で起こりやすいトラブルと対応策
■ よくあるトラブル
・地主の承諾が得られず相続登記が進まない
・地代の滞納や更新料の請求トラブル
・相続人同士で使用方法や売却方針が食い違う
■ 世田谷区特有のリスク
・高地価エリアでは地主が承諾料を高額請求することも
・古い契約の場合、地代が「時価とかけ離れている」ケースも
■ 対応策
・相続前に地主との関係性を再確認
・承諾書の取得を早めに動く
・不動産弁護士・司法書士に相談して契約の法的有効性を検証
【第3部】借地権の評価と相続税への影響
■ 借地権の評価方法
・路線価方式で計算:更地価格 × 借地権割合(60%など)
・世田谷区は借地権割合が60%〜70%のエリアが多い
■ 建物の評価
・固定資産税評価額が基準
・借地上の建物であっても課税対象
■ 相続税対策としての注意点
・借地権があると、更地よりも相続税評価額は下がるが…
・借地権割合が高いと、それなりの課税対象にもなる
【第4部】借地権付き不動産の活用・売却の現実
■ 活用する場合
・自宅として住み続ける:地代負担を続けられるか確認
・賃貸として活用:地主の承諾が必要な場合が多い
■ 売却する場合
・借地権付き建物のみの売却は買い手が限定される
・地主から底地を購入し、所有権化してから売却する例も多い
■ 世田谷区での動向
・借地権付き物件は相場より価格が安いため、リノベ目的での購入者もいる
・一方で、再建築不可や狭小地のケースでは売却が困難
【第5部】借地権付き不動産の相続チェックリスト(世田谷区対応)
□ 借地契約書や更新履歴を把握しているか
→ 初回契約日・更新条件・借地の種別(普通借地か定期借地か)を確認
□ 地主と連絡が取れる関係を維持しているか
→ 相続時に承諾書取得や条件交渉が必要となるため、関係性は重要
□ 建物と借地権が誰名義かを確認しているか
→ 相続登記や売却時にトラブルを防ぐためにも確認が必須
□ 借地権の登記がされているか
→ 未登記の場合、第三者に権利主張ができず不利になる
□ 地代・承諾料・更新料の金額と支払い状況を把握しているか
→ 未納があると相続後の交渉で不利になるケースあり
□ 相続人間で物件の利用・売却方針を話し合っているか
→ 自宅利用か売却かなど方向性のズレがトラブルのもとに
□ 世田谷区の地価・借地権割合を確認しているか
→ 相続税評価額の算出に影響大。路線価図の確認が有効
□ 借地権を活かすor整理する方向性を明確にしているか
→ 継続利用・買い取り・底地取得・売却など選択肢を整理
“借地権”の相続は専門性の高いテーマ。準備が未来を左右する
世田谷区のような借地が多く、地価の高いエリアでは、相続時に借地権がついていることが大きなハードルになることがあります。
「相続税が軽減されるから安心」と思っていたら、実際は承諾問題や登記問題、売却困難など、実務での課題が山積みだった──という声も多く聞かれます。
大切なのは、契約書の確認と地主との関係構築、そして早期の専門家相談。
借地権付き不動産の相続には、通常の相続よりも一歩踏み込んだ対策が必要です。
世田谷区で安心して相続を乗り切るためにも、今からできる備えを始めましょう。