コラム
土地だけ相続したときに起きやすい問題 〜世田谷区で土地を相続した方に伝えたい注意点〜
- 2025.06.09
- カテゴリ:
不動産相続コラム
親から相続した不動産が「更地」だった──。
一見シンプルに見える土地だけの相続ですが、実は建物付き不動産よりもトラブルの火種を抱えていることがあります。
特に、世田谷区のように地価が高く土地利用に多様性のある地域では、相続した土地が「負動産(ふどうさん)」と化すリスクも否定できません。
この記事では、土地だけ相続したときに起きやすい5つの問題について、世田谷区の事例や地域特性を交えながら詳しく解説します。
【第1部】固定資産税が高額化しやすい
世田谷区の土地は、住宅地であっても評価額が高く、課税標準額も大きくなりやすい地域です。
■ 更地は住宅用地特例が使えない
建物がない=「小規模住宅用地の軽減措置」が適用されず、課税額は通常の約3〜6倍に。
仮に建物を解体したまま放置した場合、次年度から急激に税負担が上がるケースも。
■ 相続人が複数いると「誰が払うの?」問題が発生
固定資産税の納税通知書は代表者1名に届くが、他の相続人との費用分担の合意がないとトラブルに。
→ 世田谷区では、税務課や都税事務所が窓口になるが、相談前に関係者間で分担や活用方針を確認しておくことが重要です。
【第2部】境界線・地目・接道のトラブル
■ 境界標がない土地はトラブルのもと
・世田谷区の旧宅地造成エリアや私道が多い区域では、登記と現地境界が一致しない土地が多数。
・隣地所有者とのトラブルや、売却時に「境界確定が必要」と言われるケースも。
■ 接道義務を満たしていない「再建築不可」問題
・建物がないことで「再建築不可」と指摘されるケースも。
・世田谷区内では、旗竿地や敷地延長がからむ土地に多く見られます。
→ こうした法的問題を放置すると、資産価値が大幅に下がる可能性があります。
土地家屋調査士や行政書士に早めの確認を。
【第3部】利用・活用方法が定まらない
■ 賃貸・駐車場にしようとしてもハードルが高い
・世田谷区の一部エリアでは建築基準法・都市計画法・条例などの制約があり、活用の自由度が低い土地も。
・近隣住民の反対や騒音問題なども障壁に。
■ 「売るつもりだったのに売れない」
・接道・用途・地盤・都市計画道路の予定地などの影響で売却困難になる例も。
・土地が広すぎて分筆が必要、逆に狭すぎて収益化できない──いずれもよくある世田谷区特有の事例。
→ 地元不動産会社や建築士との連携が不可欠です。
【第4部】名義変更の遅延と代償分割トラブル
■ 「土地だけだから急がなくていい」が命取りに
世田谷区では、都市整備事業や区画整理が進むエリアもあり、名義が古いままだと交渉や手続きに支障が出ます。
■ 土地だけ相続→代償金の分配が不明確に
相続人の一部が土地を取得し、他の相続人に「代償金(現金)」を支払う予定だったが、金額の根拠が曖昧で揉めるケースが多数。
→ 「不動産の評価」と「金銭の評価」を別にせず、同時に進めるのが鉄則です。
税理士・不動産鑑定士のアドバイスが有効。
【第5部】世田谷区で土地相続時に行うべきチェックリスト
➀ 登記名義の変更 相続登記を完了しているか?(法定義務あり)
② 固定資産税の納税者 代表者は誰か?負担割合は合意済みか?
➂ 境界線の確認 境界標・境界杭が明確か?/隣地とトラブルなし
➃ 接道義務の確認 建築基準法上の道路に2m以上接しているか?
⑤ 再建築の可否 「再建築不可」の可能性がないか?
⑥ 活用予定の明確化 保有・売却・賃貸など家族で方針共有済み
⑦ 法的制約の確認 用途地域・都市計画道路・条例の制限確認
⑧ 評価・分割計画 他の相続人への代償金や評価の根拠明確か?
⑨ 専門家相談 司法書士・税理士・調査士等に相談したか?
「土地だけ」だからこそ、油断せず早めの対策を
土地だけを相続するということは、一見「面倒が少ない」と感じるかもしれません。
しかし、実際には境界・税金・活用・名義・評価といったあらゆるトラブルが“見えないまま潜んでいる”ことが多くあります。
特に、世田谷区のように地価が高く法規制も複雑な地域では、土地の価値があるからこそ、「扱い方を間違えると損をする」可能性が高くなります。
親から受け継いだ土地を、資産として守るか、負債として抱えるかは、相続後の初動で決まります。
「土地だけだからこそ、早めの準備」と考え、必要に応じて地元専門家に相談してみましょう。