コラム
自宅とアパートを両方相続するときの考え方 〜世田谷区での事例を踏まえた資産承継のポイント〜
- 2025.08.10
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不動産相続コラム
世田谷区での相続相談の中でも、特に判断が難しいのが「自宅とアパートを両方相続するケース」です。
世田谷区は住宅地としての人気が高い一方、賃貸需要も旺盛で、アパート経営をしている地主さんも多くいます。
しかし、相続となると「どちらを誰が受け継ぐのか」「税金はどうなるのか」という問題が複雑に絡み合います。
自宅は家族の生活の場として、アパートは収益物件として、それぞれ価値も役割も異なります。
本記事では、世田谷区で自宅とアパートを同時に相続する際に考えるべき5つの視点を、実例やチェックポイントとともに解説します。
【第1部】世田谷区で自宅とアパートを両方相続する背景と特徴
世田谷区は東京23区内でも有数の住宅街であり、同時に学生や単身者向けの賃貸需要も高い地域です。
そのため、多くの地主が自宅と併せてアパートを所有しています。
◆自宅
・祖父母や両親から受け継いだ土地に建てられた一戸建てや二世帯住宅が多い。
・住み続けることで「小規模宅地等の特例」が使える可能性がある。
◆アパート
・築年数や構造によって評価額や収益性が異なる。
・相続税評価額は建物部分が時価より低くなりやすいが、土地の評価は高額になることが多い。
世田谷区では、路線価や固定資産税評価額が高く、両方相続する場合は課税額が重くなる傾向にあります。
【第2部】税金面から見る自宅とアパートの相続
◆小規模宅地等の特例の活用
・自宅については、同居親族や一定条件を満たす相続人が取得すれば、最大330㎡まで評価額を80%減額可能。
・世田谷区の高額地では、この特例が相続税額を大きく下げる鍵になります。
◆アパートの貸家建付地評価
・アパートの土地は「貸家建付地」として評価額が約20%減額される場合があります。
・ただし、空室が多い場合や使用実態によっては適用できないこともあるため注意。
◆現金納税の確保
・不動産ばかりを相続すると、現金が足りず納税資金に困るケースが多い。
・アパート収益を活用する方法や、一部売却も検討する必要があります。
【第3部】分け方の選択肢とメリット・デメリット
◆選択肢1:自宅とアパートを別々の相続人に分ける
メリット:財産を物件単位で分けやすく、管理責任が明確になる。
デメリット:評価額の差によって公平感を欠く可能性。代償金が必要な場合あり。
◆選択肢2:自宅とアパートを共有で相続する
メリット:すべての相続人が権利を持つため公平感はある。
デメリット:管理や売却の意思決定が難しく、将来の争いの火種になりやすい。
◆選択肢3:売却して現金で分ける
メリット:分割が容易で、納税資金も確保しやすい。
デメリット:住み慣れた自宅を手放すことになる可能性がある。
【第4部】世田谷区での実例:成功と失敗
◆成功例
世田谷区成城で、自宅と築20年のアパートを相続した兄弟。
兄は自宅を、弟はアパートを取得。評価差は代償金で調整し、
双方がそれぞれの不動産を管理しやすくなった。相続税は特例適用で大幅軽減。
◆失敗例
世田谷区用賀で、自宅とアパートを3人兄弟で共有相続。
賃料分配や修繕費負担で意見が対立し、最終的に売却を余儀なくされた。
売却時の税金や仲介手数料もかさみ、手元に残った現金は想定より少なかった。
【第5部】相続前にやっておくべきチェックリスト
・自宅・アパートの最新の評価額を確認したか
・小規模宅地等の特例や貸家建付地評価の適用可否を確認したか
・アパートの空室率や修繕計画を把握しているか
・相続人全員で分け方の希望を共有しているか
・納税資金の目途を立てているか
・将来の管理体制(誰が管理するか)を決めているか
・売却時の税金(譲渡所得税)も試算しているか
大切なのは相続発生前の事前準備
世田谷区で自宅とアパートを同時に相続する場合、評価額が高額になりやすく、税金・分割・管理の3つの視点が不可欠です。
小規模宅地等の特例や貸家建付地評価など、制度を上手く活用することで大幅な節税が可能になります。
大切なのは、相続が発生する前に「誰が何を相続するか」を家族で話し合い、評価や収益性を正しく把握すること。
世田谷区は不動産価値が高いからこそ、事前の準備が結果を大きく左右します。